ナガサキエール - 長崎県ふるさと暮らし魅力発信事業

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長崎からエールを

地域の暮らしに安心を。 vol.1┃社会福祉法人・南陽会

地元の人が「いいな」って思える町って、素敵だと思うんです。

遡ること1年前、土井首を拠点に南部地区限定のフリーペーパー「Hajikko」の制作などを行っている武次亮さんへの取材の中で聴いたひとことだ。

こちらが当時のインタビュー。

当時のインタビューの冒頭で、僕は土井首に対する想いをこのように綴っていた。

春先には、中学校の裏手から野母崎半島のはじっこまで繋がるサイクリングロードに山桃を採りに行った。夏になると、花壇に植えてある花を求めて毎日のようにシカが現れた。秋になれば、通学路にある家のおばちゃんが柿をくれた。

(中略)

釣りに行きたければ深堀や香焼に行けばいいし、水仙や潮干狩りを楽しみたければ野母崎までひとっ走り。気付けば伊王島までも陸路で行けるようになった。いまだから自分自身が恵まれていた環境にいたのだと理解できているが、これが当たり前だった僕は大人になるまでその魅力に気付けなかった。

引用元:地元の人が「いいな」って思える町って、素敵だと思うんです。

暮らし方や働き方が見直される中で「都会の雑踏に辟易する」なんてことをよく耳にする。その良薬として度々取り上げられるのは「自然あふれる地方の魅力が~!」に他ならない。僕が1年前に綴ったこの一節には、まさにそんな想いがぎゅっと凝縮されている。

この想いは大きく変わっていない。同じように感じる人たちもたくさんいるだろう。けれども、地方に住んでいる人たちはうっすらと気付いているのだ。これ、ウチに限ったことじゃなくない?

暮らしている人の数、自然の豊かさ、これらを相対的に比べることはいくらでもできるけれど、とどのつまり「どんぐりの背比べ」だ。誰もが口を揃えて「このまちの魅力は人だ、自然だ」という背景は、そこまであからさまに可視化されているものじゃない。

ならば、僕たち自身は何を以て「うちの地元は特別だ」と誇りに思うのだろう。何を以て、僕たち自身の中で差別化を図っているのだろう。その答えもまた、暮らしているまちの中でしか感じられない。

ということで今回は、約1年ぶりとなる地元・土井首特集。特別養護老人ホーム、ショートステイ、デイサービスといった高齢者向け施設と、企業主導型保育園・みなみのかぜ保育園を運営する社会福祉法人 南陽会さんにお話を訊いた。

取材にご協力いただいたのは、施設の理事長を務める小川幸雄さん、幸雄さんの妻でみなみのかぜ保育園の園長を務める小川京子さん、そして保育士として勤務する高﨑千草さんの3名。

前編となる今回は、南陽会が誕生したきっかけや理想像、更には企業主導型保育園を採用した理由を深掘り。そして後編では、その想いをカタチにするために奮闘する現場のスタッフさんの話を特集していきます。

ショートステイ「南陽の風」。みなみのかぜ保育園を併設している。

— もっと、介護施設があるといいよね

同じ南部地区にあたる深堀地区で生まれ育った幸雄さんは、南陽会を設立するまで設計事務所で建築物の計画や開発を行っていた。自分が年齢を重ねていく中で気がかりだったのが、母親の介護だったという。

小川(幸):母(の出身)が脇岬なんですよ。周りにも高齢者が多い地域だし、親父が亡くなる前から「介護施設がもっとあるといいよね」と話をしてたんです。それから親父が亡くなったタイミングで、長崎市が地域密着の特別養護老人ホームの募集をスタートしたんです。

長野:当時、南部にはそんなに施設がなかったのでしょうか?

小川(幸):そんなことはなかったんですが、施設の数に対して高齢者が増えているという実感はあったんです。僕の周りだけかもしれないけど(笑)。なぜ当時、あのタイミングで応募しようと思ったのかは正直覚えていませんが、きっかけは母の面倒を見ることに対しての不安が大きかったかもしれないですね。

長野:設計職に携わられていたとのことで、福祉や介護の知識を学びつつ準備を進めていったのでしょうか?

小川(幸):それが全く(笑)。ですが、設計事務所をやっていた経験が活きたんだと思います。仕組みや組み立て方は見えていたので、「自分だったらどうするかな」という視点で準備を進めました。


2010年に社会福祉法人の認定を受け、翌年(2011年)に南陽会を開設。特別養護老人ホームとしてスタートした施設が、現在では保育園を運営するほどまでに事業規模が拡大している。

保育園の子どもたち(提供:みなみのかぜ保育園)

「介護」と「保育」を両立させた理由

南陽会が運営する「みなみのかぜ保育園」は、近年注目を集めている企業主導型保育園。内閣府のホームページでは、以下のように解説されている。

企業主導型保育事業は、平成28年度に内閣府が開始した企業向けの助成制度です。企業が従業員の働き方に応じた柔軟な保育サービスを提供するために設置する保育施設や、地域の企業が共同で設置・利用する保育施設に対し、施設の整備費及び運営費の助成を行います。

引用元:企業主導型保育事業の制度の概要と企業のメリット

「無認可保育園」と呼ばれることもあるけれども、簡単に言えば内閣府が認めたれっきとした保育施設なのだ。

ここ数年で「企業主導型」という言葉が浸透してきているものの、開設当時は聴き慣れない制度に「普通と違うかも」と一歩引いた目で見られることもあったという。幸雄さんは、子どもの数こそ少ないけれど、この制度で運営をしているからこそのメリットも大きいと話す。

小川(幸):制度がスタートして2年目だったかな。南陽会を設立した当初は「保育園もやろう」という考えはなかったんですが、「幼」と「老」の交流を促して介護ケアに繋げていくことにすごく興味があったんです。多世代交流というのは、大きなテーマとして考えていたもんだから。

長野:補助金が充実しているというのは、新規事業をはじめる上で重要なポイントになってきますよね…。

小川(幸):資金面での課題もあったので、「これだったらやれるかも…?」という思いは大きくなりましたね。不規則な勤務時間になる介護事業との両立という観点でも、企業の裁量で運営できるというのは非常に良かったです。


長野:僕自身、子どもをどこに預けるかで悩んでいる際に気になっていたのが、「認可外」という言葉でした。いまでこそ企業主導型保育園に預けているので「企業主導型」と言うようにしていますが、保護者や子どもにとってのメリットはどんなところにあると思いますか?

小川(幸):子どもさんを預かるとは言っても、一般的に保育園は「お母さんが働いているから子どもさんを預けられます」ってスタンスじゃないですか。もっと言えば、「休みの日には自分で子どもさんを見てください」。

高﨑:預けられないわけではないんですが、「預けにくい」というのはありますよね。認可を受けた保育園でも働いていましたが、「休みの日はお子さんと一緒に過ごしてあげてください」と伝えることが多いです。

小川(幸):そのこと自体は間違ってないんですが、企業主導型保育園はその縛りがないんですね。「お母さんが働いていなくてもお預かりしますよ」と。子どもをほったらかしにしていいとは言いませんが、ずっとそのままだとリフレッシュする時間がないんです。

長野:僕も父親になるまでは「何で休みの日まで子どもを預けるんだ」という価値観を持ってました。でも、共働きで子育てをすることで見えてくる視点があるというか。1人の時間が取れないっていうストレスが、かえって子育てに影響してしまうんじゃないかと思うようになりました。

小川(幸):各家庭の暮らし方もあれば、旅行に行きたいとも思う。たしかに「休みの日は子どもと一緒」という考えは必要。ただ、それと同時に子育てには余白が必要だと思うんです。そういう選択肢が生まれるということも、企業主導型保育園のいいところだと考えています。

長野:そのバランスを見極めることも、保護者にとって大切なのかもしれません。そんな相談も、保護者と保育士さんの間でできたらいいなあと思います。

小川(幸):まだ設立して5年なので「らしさ」を生かしたメリットはまだまだこれからだと思ってるんですが、施設に看護師さんが9名いるんですよ。経験豊富な方が多いので、子どもたちのケガや病気の相談もできる。

高﨑:現場で働く保育士としても、常に看護師さんがいてくれるのは大きいですね。保育士として想定できる範疇を越えてきたときに、看護の知識や技術を持った人たちに頼れるというのは心強いです。

小川(幸):今は自分たちでいっぱいいっぱいなんですが、いつか地域に対して同じことができたらと思ってます。

長野:おそらく「小規模だからこそ」という部分もありますよね。ただ、地域でそういった取り組みがいざ始まるというときに、そのノウハウを持ってる事業者がいることもまた心強い…!

小川(幸):あと、子どもたちの笑顔は高齢者にも伝染する。いわゆるリハビリとは違うかもしれないけれど、普段はじいっとされている利用者さんも、子どもたちを見ると頬が緩むんです。

長野:かわいいは正義ですね…。

小川(幸):子どもたちから見ると「見慣れないじいちゃん、ばあちゃんがおる」くらいなのかもしれませんが、近くにお年寄りがいることを理解しないまでも、感じてもらえたらいいのかなと。そのかかわりの中で芽生える優しさに、大きな意味があるはずなんです。

長野:健康という視点で見ると良くないことなのかもしれませんが、おじいちゃんが介護施設に、お孫さんが保育園に……なんて光景も、いつかあるのかもしれないですね。

子どものお世話をする高﨑さん(提供:みなみのかぜ保育園)

小規模だからこそ実現できる「あたたかさ」

長野:小川(幸)さんが目指す施設像というものが、少しずつ見えてきた気がします。

小川(幸):大きな目標というのは思いつかないけど、ここは規模が小さいでしょ?こじんまりとして、あたたかい。小規模だからこそ実現できる「あたたかさ」を持った施設であることを大切にしたいと思ってます。そのことは、常に高﨑先生はじめみなさんにはお願いしているところです(笑)。

高﨑:しっかり、できております!(笑)

小川(京):本当に、目が行き届いてます。規模の大きさ=充実というわけではなく、小さいからこそ密度の濃いかかわり方ができるというのも、メリットだなと感じてます。

小川(幸):それと、ここから見える景色がいい。小さい頃から、こういった自然に触れられる環境は大切なんじゃないかと。

長野:実はいま、土井首の地域コミュニティ協議会の活動にも少し携わっているんですが、その活動の中でもここからの景色が話題になったんです。伊王島から端島まで見渡せる場所は、ここしかないですよね!

高﨑:特に夕焼け。タイミングが合えば、すっごく綺麗ですよ!

小川(幸):ここの利用者さんや子どもたちは、南部で暮らす方たち。自然が近くにあるというのはもちろんですが、見慣れた景色がここにあるというのは、高齢者のみなさんにとっても特別なんです。

秋口の澄み切った夕焼け空はどこか懐かしさを感じます。

— 地域で多世代交流を促せるように

小川(幸):さっきも言いましたが、地域と密に関わる施設でありたいと思ってて……コロナ禍なのでもう少し先になるかもしれませんが、地域の秋祭りに子どもたちと一緒に参加したりできないかと考えてます。

長野:地元の人たちが介する場所での交流、といったところでしょうか?

小川(幸):そうですね。まだどうしても「従業員のための保育園」だと思われる方も多いので。まずは私たちを知ってもらうことからだと思うので。

小川(京):園児の募集は出していますが、チラシ1枚で説明できる内容も限られているんですよね。

長野:「時間単位で子どもを預けられる」とも聴いたのですが…。

高﨑:そうなんです。例えば、「買い物や美容室に行きたい」といったときに、一時保育で預かるとか。余裕をもってご連絡いただく必要はあるんですが、そういった形でもぜひご活用していただけたらと思ってます。

長野:その情報を知ってたら、必要とされそうですよね…?

高﨑:それ!なんででしょうね、見た目は結構目立つのに(笑)。

小川(幸):やっぱり、まだまだ認知度が足りないんでしょうね。少しずつでも地域の方に知っていただいて、多世代交流が促せるような施設になっていきたいですね。


理想とする施設の形が見えてきている一方で、地域との関わりや認知度の部分で課題を感じているという南陽会。

次回・後編では、実際に現場で働く高﨑さんにクローズアップ。

小川(幸)さんと同じく深堀地区出身で、現在も三和地区で暮らしている高﨑さん。保育士の仕事や、生まれ育った地元で働くことについてのお話を深掘りしていきます。

施設名社会福祉法人 南陽会
住所長崎県長崎市蚊焼町649番地3
ホームページhttp://www.nanyoukai.com/

ライター紹介

長野 大生

ライター・編集者/chiicoLab.

長野 大生

長崎市出身のライター・編集者。2021年からは、長崎を舞台にした短編小説集を制作するプロジェクト「ショートショート長崎」の代表として、ショートショートの普及活動も行っています。

最後に、理想の実現へ向けたエールを

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